ノイローゼの依頼人による調査依頼
探偵を長くしているとさまざまな悩みを抱えた老若男女と面談することになる。
どういう訳かノイローゼの依頼人と面談する事も多い。
典型的なのが大きく分けて2種類のノイローゼの依頼人がいる。
盗聴・盗撮
一つ目はなんと言っても盗聴、盗撮関連のノイローゼである。
正直に言うと仮に10件の盗聴相談があると6割はノイローゼと思っても良い。
しかも自宅に盗聴器が設置されているという人は9割はノイローゼと疑ったとしても過言ではない。
「盗聴されているかもしれないから検索に来て欲しい」
ここまではよくある盗聴器捜索の問い合わせの依頼内容である。
どのような被害があるのですか?と問いかけに普通だとあるところで話をした内容が他人や別の会社に漏れている形跡があるからという返答が多い。
正常な返答である。
ところが中には「私が部屋を移動すると2階の人や下の階の人もついてきて床や天井をたたき出す。これは盗聴器がついているからだ」と言う人や、
「テレビを消したのに声がする。しかもお前を見張っていると言っている。盗聴器からの声に違いない。」
「どこからか判らないが電磁波みたいなのをあてられている。カーテンを閉めても居場所が分かるのは盗聴器が付けられているからに違いない」などなど。
どれもこれも完全にノイローゼである。
しかも普通に生活している人たちなのである。
正直、このように明らかなノイローゼの人からの依頼は受けたくない。
丁寧にお断りしようとするも中には必死にお願いしてくる。
こういった人にとっては探偵は医者かカウンセラーのようなものなのかもしれない。
実際に盗聴調査に赴き、いろいろと精査するが設置されているはずがない。
今度は付いてない事を説明するのにもかなりの時間を取られ一苦労である。
それでも依頼人は依頼人である。
どうにか説得し納得させ帰路につくのであるが数倍の疲労感を味わうこととなる。
最近では盗撮されているという相談もくるのであるが殆どが同様のノイローゼである。
何しろ自宅の部屋にカメラが仕掛けられていてずっと誰かに見られているという。
集団ストーカー
二つ目は盗聴と相関するのであるが自分が不特定多数の人から見張られ、つけ回されているという相談。
確かにストーカーの被害に実際に遭って困っている人もいるのでノイローゼとは決めつける事は出来ない。
ただ実際のストーカー事件と異なり、共通して言えるのは「不特定多数に見張られている」という事である。
しかも依頼人の行き先々にいろいろな人が依頼人の顔を見て携帯電話で連絡を取り合っていたり、どこにいってもそんな人物が現れるのは大きな組織や団体が動いている違いないと思い込んでいる。
ひどい人だとどこから情報を集めたのか「宗教団体が組織ぐるみで私を見張っている」とか「CIAが動いている」と突拍子もないことを言ってくる人もいる。
また近所の商店や何度か行ったことのあるお店の人が突然、冷たくなったのは誰かが私の悪口を言いふらしていると言い始めるなど典型的なノイローゼの症状である。
こちらは真面目にストーカー被害者かと話を聞いていくとこの様な話になっていくともう相談も中止にして依頼を断ろうとする。
しかし、盗聴ノイローゼの人と同じである。
当人は必死なのである。
簡単に無視も出来ないのである。
どういう訳か信じられないがこういった人たちも普通に生活しているのである。
中には資産家の人もいる。
騙している訳ではないが数週間、依頼人を尾行する人がいないかを確認し依頼人が怪しいという何人かの人物をマーク、身元を調査したりとスタッフ総出で対応、結果、高額な調査料金を支払って頂いたというケースもあった。
ただしこういった人の場合、より以上にビデオなどを駆使し調査結果を丁寧に説明していかないと納得はしてくれず、むしろ勝手に思っている組織に買収されたのではと疑ってくる人もいるのである。
基本的にノイローゼと判断できる人の依頼は正直、受けたくないのが探偵の内緒の実情である。
尚、あくまでも統計的なものであるが季節の変わり目になるとこの様なノイローゼの依頼人が増えるのは何かしらの因果関係があるのかもしれない。